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占いの話

〔ホット・リーディング〕

 

 占いが当たっていようが外れていようが、相手に的中していると思わせるトリック的話法技術が存在します。

 ホット・リーディングもそのひとつで、被験者に対しては、全くの初対面で何も知らないと装います。

 しかし、その実、事前に相手についてのあらゆる情報を集め、その人が何に悩み、どんな問題を解決したいかなどを知り尽くしています。


 いわゆる霊能者などは、実は事前に情報を収集しておき、あたかも様々な事実を言い当てるように振り舞うのです。

 このような準備のために、例えば霊能者は、占いの申し込みを受けると、占いの申し込みが多くて、すぐには対応できないので、数日~数週間だけ待ってくれと、尤もらしく時間稼ぎをします。

 そして、その数日~数週間の間に、自分自身あるいは、その手下が、その対象者のあらゆる情報を掻き集めます。そして、もう全てを知り尽くした上で、何も知らないふりをして占いを行うのです。



ホット・リーディング 〔ホット・リーディング〕は一種の騙しのテクニックだ。
ホット・リーディング

 巷では、いわゆる超能力者が、特定の個人をとりまくいろいろな事実を予言したり、言い当てたりすることがあります。自称、霊能者あるいは霊媒師なるものが登場して、このようなテレビ番組が放送されることがあります。

 事前に全く面識もなく、情報もなしに特定の個人の家族のことや先祖のこと、一族のことなどを知ることができるでしょうか。もちろん、そのようなことは不可能だと誰でも知っています。

 しかし、「ホット・リーディング」と呼ばれる方法を使うことで、霊能者は被験者の家族や先祖のことをあたかも全て見透しているかのように振り舞います。

 ホット・リーディングは、いわゆる霊能者や霊媒師、あるいは超能力者が、他人の心を読み取り、その人の先祖や本人・家族の過去、現在の状況などを言い当てたり、予言したりするための技法です。実は、霊能者は事前に情報を収集しておき、あたかも様々な事実を言い当てるように振り舞うのです。

 霊能者は、最初に被験者に対して初対面であり、何も知らないと言い信じ込ませます。実は、既に述べたように事前に徹底的な調査を行っていて、被験者が質問するであろう疑問点を完全に承知し、被験者が賛同し感動するであろう美しい物語を作り上げてから、面会するのです。

 全く初めて対面すると信じ込んでいる被験者は、自分のことを次々と当てられることで、たちまち、霊能者を完全に信じこんでしまいます。その上で、霊能者がいうことは絶対的なこととして、言いなりに従うようになってしまうのです。

 この結果、カルト宗教に入信させられたり、高額な商品を買わされたりするようになるのです。ホット・リーディングの手法は、いわゆる霊感商法などに頻繁に利用されています。ホット・リーディングもまた一種の騙しのテクニックののです。

事前の調査

 リーディングを行う霊能者は、自分だけでなく弟子や協力者を仕立てて動員するなど、自らの集団の総力を結集して、被験者に関する情報を徹底的に調べあげます。

 また、リーディングを開始するまでの何気ない会話もすべて傍聴し、情報収集の道具として利用します。

 噂によれば、自称、霊能者、霊媒師、超能力者を名乗る者たちは、決して表に出ることの無い膨大な「顧客名簿」を構成し、占いを依頼にくる被験者の悩みや背後関係などの情報データバンクを共有していることもあるそうです。

 通常、霊能者は面会を希望する被験者とすぐには面会などしません。ひとつには、威厳を示すためでもあるのですが、もうひとつ重要な段階があるからです。

 面会は予約制で数週間後などに設定されます。この間に調査をするための時間を稼ぐのです。

 調査に当たっては、調査マンを派遣し、周囲の住民や家族などから情報を集めます。時にはセールスマンを装ったり、宗教の伝道者を装ったりして、被験者の家族のこと、生い立ち、悩み、抱える問題、最近の出来事などを調べ上げます。

物語の構成

 被験者は、何か深刻な悩みを持っています。あるいは、亡くなった家族との間で終結していない会話を完結させたいと願っていることもあります。何かで後悔し、謝罪したいと思っているかもしれません。

 霊能者は、実は事前に行った詳しい調査により、被験者がどんな相談をしたいのか、既に知っているのです。

 霊能者にも狙いはあります。自分のカルトの信者数を増やしたい、あるいは、高額な霊感商品を売り込みたいなどです。

 このためには、先ず、被験者自身のことや悩み、希望などを次々と言い当て、驚かさなくてはなりません。そして、次に、被験者が最も知りたい、望んでいることをひとつの感動物語として、作り上げます。

対面

 いよいよ対面のときがきます。霊能者は何事にも動じないという雰囲気を装うために、特有な装束に身を固めて登場します。耳には、密かにイヤホーンが埋め込まれています。

 霊能者は事前の調査で既に多くのことを知っていますから、すぐに相手の悩みなどを言い当てることができます。被験者がちょっと驚きを示す間も、次々と驚きを与え続けて、徐々に信じ込ませ、一種の洗脳状態をつくりあげます。

 あるレベルの洗脳が出来上がると、いよいよ感動場面に移行します。既に作ってある、被験者が感動しそうな、感動の物語を深刻な表情で語り始めるのです。

 例えば亡くなった奥さんがあの世でどんな風に思っているか、あなたのことをああしてやればよかった、こうしてやればよかったと言っている。あなたのことは全て許しているのだから、安心して稼業に励んで欲しいと願っている、など、いろいろな物語を語ります。とにかく、被験者を感動させることが最大の狙いです。

 こうして、完全に(実は偽の)信頼関係を構築します。

狙いの完結

 霊能者には、自分のカルトの信者数を増やしたり、高額な霊感商品を売り込みたいなどの狙いがあります。完全な信頼関係が完成すると、被験者は霊能者の言うなりになっているので、どのようなことも容易にできるようになります。

暴露の瞬間

 余談ですが、最近、とても興味深い話がありました。

 頻繁にテレビなどに出演する自称、霊能者と称する非常に有名な占い師が、霊媒としてあの世を訪問し、父親を亡くした人の父親と面談したというのです。

 この世に帰ってきた霊能者はいいました。

 「あなたのお父さんは、あの世でいつもあなたのことを心配しています。あなたに良いことが起こるようにいつも願ってくれているのです。この世であなたのことを十分面倒を見られなかったことをとても後悔しているとおっしゃっていました。・・・」

 こうして、霊媒師は亡くなった父親との会話の一部始終を話し終えました。父親を失った人は、あの世で父親が話したことに耳を傾け、感動し涙を流し、その番組は幸せな気分に包まれて終わりました。

 ・・・・・・

 それから、しばらくして、大変なことが判かったのです。死んだ筈のその父親は実はまだ元気に生きていることが判ったのでした。

 一体全体、あの霊媒師は誰の父親と会って話をしてきたのでしょうか。いやいや、本当に誰かと話をしてきたというのでしょうか。この事実は、霊媒師が100%嘘をついていることを証明したのです。