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占いの話

〔コールド・リーディング〕

 

 コールド・リーディングは、ごくありきたりな会話や、外観を観ただけで、一瞬にして相手に信用させ、短時間で(偽の)信頼関係を作りあげる話術技法です。

 この技法は「事前の準備無しで相手の心を読み取る」技術だといえますが、街角の占い師や詐欺師、あるいは霊能者などが、相手に自分のことを信用させるために頻繁に使用する古典的な話術的技法です。

 特定の宗教にのめりこんだ者が、その宗教の信者を勧誘するとき、あるいは悪徳商品の販売に用いたりします。



コールド・リーディング 〔コールド・リーディング〕は一種の騙しのテクニックだ。
コールド・リーディング

 コールド・リーディング(cold reading)とは、特別でない会話をしたり、外観を観察するだけで、一瞬にして相手に信用させ、短時間で信頼関係を作りあげる話術的なテクニックです。

 通常、「cold」は冷たいという意味で使われますが、ここでいうコールドは、「全く準備なしで」とか「事前の準備なしで」、あるいは「丸腰で」などの意味合いとして使われています。

 そして、「reading」という言葉には、書物などを読むという意味もありますが、ここでいうリーディングは、「心を読むこと」や「占うこと」などの意味を持っています。

 結局、「cold reading」は、「事前の準備無しで相手の心を読み取る」技術だといえます。コールド・リーディングは、辻で占う占い師や詐欺師、あるいは霊能者などが、相手に自分のことを信用させるために頻繁に使用する古典的な話術的手法です。

 特定の宗教にのめりこんだ者が、その宗教の信者を増やそうとして用いることもしばしばあります。

 セールスマンが、巧みな言葉で悪質な商品を販売するときや、警察官が被疑者に誘導尋問する場合など必ずしも公序良俗に適合しない手段として、コールド・リーディングを利用することもあります。

 一方で、催眠療法家によるセラピーなどのように、中には必ずしも悪徳であるとまでは言えない場合もあります。

 コールド・リーディングの手法は、次に示すような「事前の誘導」「対象者へ質問」「対象者の反応をさぐる」「情報の引き出し」および「次のステップへの移行」などの段階で行われます。

事前の誘導

 コールド・リーディングを行う前には、必ず読み取る相手の協力を引き出すために次のような誘導的会話を行います。

 「わたしには、おぼろげながらちょっとしたイメージが思い浮かぶのですが、今のところ未だあまり明確には見えてきません。わたしよりあなたの方がより深く意味を理解できるかも知れません。あなたといろいろお話することで、二人が協力すれば、より鮮明なイメージを固めることができると感じています。きっと、あなたの隠れた姿を明確なものとできるでしょう。」

 相手の気持ち、考えていることなど、相手からより多くの情報を引き出す目的でこのように切り出すのです。

対象者へ質問

 相手に悟られないように、相手をよく観察しながら、誰にでも当てはまりそうな些細な会話を始めます。次のような会話がそのような例になるでしょう。

 「あなたは、見知らぬ人と話をすると、どうも自信がなくなる感じのすることがあるようですね。わたしにはそのように見えるのですが、いかがですか?」

 あるいは、本当はその相手とは全く無関係なのに、一見具体性があるような内容の話を出してみます。

 「わたしにはあなたのそばに猫を抱いている老婦人のイメージが見えます。少々元気が無く悲しそうな顔をしています。このご婦人がどなたか分かりますか?」

 「どうも、先ほどからわたしは、あなたの痛みを感じるようになりました。腰が痛いか、あるいは背中の辺りの痛みです」

 「あなたは、ご先祖さまに何か済まないことをしたと思っているのではありませんか。亡くなったお爺さんと以前に何かあったのですか?」

対象者の反応をさぐる

 このような一見、具体性のない無意味な質問に対して、相手はちょっと思い当たることなどあると、びっくりしたり、気まずい顔をしたり反応を示し、術者に対してなんらかの情報を明かしてしまうことになるのです。

 その反応をみて、更に掘り進んだ質問を続けることができます。こうして、推測が徐々に当たるようになると、相手はリーディングを行う者への信頼感を高めてゆくことになるのです。

 多くの質問をしていると、当然、相手は推測を否定することも起こります。たとえそのような反応が返ってきても、毅然としてうろたえることなく、威厳をもって続けるのです。

 「あなたは、それにお気づきではありませんが、わたしにははっきりとそう見えるのです。」

 相手は、こちらの態度に揺らぎが無いことを理解すると、徐々に信じ込みますます信頼感を高めてきます。

情報の引き出し

 リーディングを行う者が質問したりしゃべり続けると、相手は同意したり否定することで、実は相手の情報が一方的にリーディングを行う者へと流れ続けてゆくのです。

 このような会話にもとづく情報ばかりでなく、相手の服装や仕草、顔色、顔色の変化、口調、年齢、雑談時の言葉の反応など、すべてが相手を知る情報となるのです。

次のステップへの移行

 こうして、リーディングを行う者は、相手についての多くの情報を集め、情報の精度が高まってくると、相手は自分は何も話していないのに、自分の心の奥深くまで言い当てられている気分に陥るのです。

 この段階に至ると、リーディングを行うものは次の段階に移ることができるようになります。

 いよいよ、こちらの真の狙いをはじめます。

 「あなたの将来の姿がみえます」
 「あなたへの心霊からの伝言が聞こえます」
 「あなたの未来をお助けする霊力のある商品があるのですよ」
 「あなたのお亡くなりになった奥さんと対話することもできますよ」
 「たった今、奥さんとお話してみたいですか?」
  ・・・・

 このような、極めて不自然で信じがたいような内容の会話まで、被験者は無条件で信じてしまうようになるのです。

 この段階に至ると、すべての資財を投げ出してでも、悪徳商品を購入したり、カルト宗教などに入信したりするようになってしまうのです。